母体血による無侵襲性胎児DNA診断法の開発 −第一報−
金沢医科大学,うきた病院*,博医館ホスピタル**
高林晴夫,丹野治郎,桑原惣隆,浮田俊彦*,丘村 誠*,伊川和美*,山藤 薫*,五十嵐辰博**
(目的)胎児DNA情報を得る方法として、これまで羊水穿刺法,絨毛採取法,胎児採血法が開発され、それぞれ臨床応用され多くの評価が行われてきたが、いずれの方法においても母体,胎児への侵襲性は皆無ではなく理想的な胎児DNA診断法とは言い難い。一方、妊婦血中に胎児赤血球,白血球,絨毛細胞が出現することは既に確認されているが、それら胎児細胞を選択的,純粋に分離,採取できたとの報告は未だみられない。そこで我々は、第1段階として胎児DNA情報を無侵襲,安全に母体血より分離,採取する方法の開発を試みた。
(方法)健常妊婦60例,コントロールとして非妊婦10例,男性10例より同意の上2 ml採血し、Percoll不連続密度勾配比重遠心法により各層血球を分離,洗浄後、それぞれの沈渣よりPappenheim 染色標本を作製、鏡検し、有核赤血球の有無を調べ、micromanipulatorにより有核赤血球の採集を試みた。また胎児から母体への血液移行量を概算した。
(成績)1. コントロール血中より有核赤血球は発見されなかった。2.妊婦血中より有核赤血球は高率に発見された。妊娠8〜23週 (33/39 例=85%), 妊娠4〜7週,24週以降 (0/21)。3.Percoll密度1.075/1.085 g/ml の界面より有核赤血球が回収された。4.標本上の有核赤血球の剥離,採集がmicromanipulator の使用により可能であった。5.妊娠8〜23週の胎児から母体への血液移行量は0.001〜1 μl と概算された。
(結論)妊婦(8〜23週)血中から有核赤血球が高率に回収され、選択的,純粋に採取することが初めて可能となった。本法はPCR法,FISH法を応用した無侵襲性胎児DNA診断法の確立への扉を開くものであり、将来その普及が見込まれる。