母体血による無侵襲的胎児DNA診断法の開発−第2報−

金沢医科大学,うきた病院*,        博医館ホスピタル**

高林晴夫,桑原惣隆,浮田俊彦*,伊川和美*, 山藤 薫*,五十嵐辰博**

[目的]昨年の本会において、我々は妊娠8-23週の母体血(2 ml)から有核赤血球が高率(85%)に発見され、かつmicromanipulatorを使い選択的に回収可能となったことを報告した。これまで母体血より胎児由来細胞を選択的に回収し、かつそれら細胞から胎児DNA情報が得られたとの報告はみられない。そこで、我々は前回報告した方法により母体血中から回収した有核赤血球を用い、それらからDNA情報を得ると同時にそれらが胎児由来細胞である可能性について検討した。

[方法]今回、正常妊娠中の母体血より11個の有核赤血球を単離し、それぞれについてDYZ1領域のprimerを用いPCR法を行ない、性別を判定した。PCR法は、40サイクル増幅した後、電気泳動を行ない、染色し、DYZ1領域のバンドがみられたものを男性由来とし、バンドがみられないものを女性由来とした。コントロールは、男女それぞれの成人単離リンパ球、男女それぞれの胎児単離有核赤血球およびno DNAとした。PCR法により判定した性別と分娩後に判明した児の性別との一致率を算出した。

[成績]1. 妊娠8-23週の母体血より有核赤血球の単離回収が可能であった。2. DYZ1領域のPCR法では、単離細胞レベルでの感度が得られた。 3. PCR法による単離有核赤血球の性別判定と児の性別の一致率は91%(10/11)であった。

[結論]妊娠8-23週の母体血より単離回収された有核赤血球からPCR法によりDYZ1領域のDNA情報が得られることが示され、それら有核赤血球は高率(91%)に胎児由来と考えられた。本法,PCR法およびFISH法の応用により母体血より無侵襲的に多くの胎児DNA情報の獲得が可能となり、近い将来その臨床的な応用,普及が見込まれる。