母体血による無侵襲的胎児DNA 診断法の開発 −第3報−

金沢医科大学,うきた病院*,SRL(株)**

高林晴夫,桑原惣隆,浮田俊彦*,伊川和美*, 山藤 薫*,羽重田さおり**

[目的]前々回の本会において、我々は母体血中から有核赤血球を高率 (85%) に発見し、それらをmicromanipulator を使い選択的に回収可能であることを報告した。また前回はそれら有核赤血球の多く (91%) が、胎児由来であることを報告した。今回は発見,回収された胎児有核赤血球からPCR法,FISH法によるsingle cell analysis によりどの程度DNA情報を得ることが可能であるか検討を行なった。

[方法]単離した男性胎児由来有核赤血球(20個)をDYZ1 領域のprimer を用いPCRを行なった。同様に単離した胎児有核赤血球(17個)をTay-Sacks 病 exon11 領域のprimer を用いPCRを行なった。またPappenheim 染色標本上に発見された胎児有核赤血球の前処理(脱色,RNase 処理,pepsin処理)を条件を換えて行なった後、X,Y染色体に対するα-satellite DNA probe を用いた two color FISH及び21番染色体長腕のDNA probe を用いたFISHを行なった。

[成績]1.男性胎児由来の単離有核赤血球のDYZ1領域のPCRの結果、全てに有効な感度が得られた。2.単離した胎児有核赤血球のTay-Sacks 病 exon11 領域のPCRの結果、17個中9個に有効な感度が得られた。 3.Pappenheim 染色標本上の胎児有核赤血球を脱色、RNase 処理,pepsin 処理の後、X, Y染色体の two color FISH及び21番染色体のFISHを行なったところ、有効なsignal が得られた。

[結論]胎児有核赤血球のsingle cell analysis (PCR, FISH) により有用なDNA情報が得られるようになった。我々の開発した方法を用いれば、母体血よりnon-invasive かつrisk-free に多くの胎児DNA情報が得られることとなり、近い将来、本法の広範な臨床的応用,普及が見込まれる。